名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1024号 判決 1949年11月05日
被告人
高木信芳
主文
原判決を破棄し本件を名古屋地方裁判所岡崎支部に差戻す。
理由
弁護人寺尾元実、同平野安兵衞の控訴趣意は別紙同人等名義の控訴趣意書記載の通りである。
先ず職権を以て原判決を審査するに、原判決は理由として「被告人は昭和二十四年一月二十八日頃肩書居宅で笠原昭一から中古男子用自轉車二輛の賣却斡旋方を賴まれ、賍品であることの情を知りながらその頃寺田傳二郞を介し内一台を碧海郡安城町大字今梅田柳太郞に対し金六千五百円で、内一台を同町大字安城字上細田牛島守一に対し金四千四百円で賣却の斡旋をして賍物の牙保をしたものである」と判示している。然しながらこれ丈では判示自轉車が果して具体的に如何なる賍物であるかというの点につき何等判示するところがない。賍物罪の成立にはその犯罪行爲の目的物が客観的に観察して賍物たることを必要とするのであるから賍物に関する罪の具体的事実を判示するには犯人の爲した所爲の内容の外に尚ほその目的物が賍物たることを了解し得べき程度に具体的の事実を判示しなければならない(此の事は犯人が賍物の知情としてその目的物が如何なる犯罪により取得せられたか、又本犯の被害者が何人であるか、及び本犯の場所時等の詳細な事実を知る必要がないということとは別問題である。)だから此の点に於て原判決は賍物罪の判示として理由不備の違法がある。